窓ガラスと窓フィルムの関係
- harerutech
- 1月22日
- 読了時間: 7分
更新日:5月25日

窓ガラスにはいろんな種類があります。建物には、用途によりそれぞれの機能を持ったガラスが使われています。すべての窓ガラスにどんなフィルムも貼付けできるのでしょうか。
ここでは、窓ガラスと窓フィルムの施工について見ていきましょう。
┃窓ガラスと窓フィルムの施工
■フロートガラス

最も一般的に使用されているガラスで「透明ガラス」や「単板ガラス」とも呼ばれるガラスです。 無色透明に見えますが実際の色は緑がかっており、厚みが増すと薄緑に見えます。特殊な性能を持たないため、安価でよく使われていますが、近年は断熱性います。断熱性を求められるようになり、窓ガラスとしてフロートガラス単体での使用量は減ってが不要なエントランススクリーンや工場や倉庫、室内の間仕切りなどで使われます。
使用される厚みは一般的に3mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、19mmで、それ以上のものは複数毎のガラスを合わせて作られます。
【熱割れのリスク】
小
【施工可能フィルム】
殆どのフィルムが施工可能
■型板ガラス(凹凸ガラス)

ガラス片面に凹凸模様をつけた平滑なガラスです。光を拡散することで視界を遮る機能を持たせているので、日射の透過率はフロートガラスとさほど変わりません。主にプライバシー確保の目的で、特に浴室や洗面脱衣室、ドアや室内の間仕切りなどに用いられています。
型模様の種類は基本的に 厚さ2mmの「梨地」と6mmの「霞」の2種類で、2mmは外部に面する窓では使用しません。また、埃や汚れが付きやすいため凹凸面は室内側で、平滑な面を外部側に向けて設置します。
【熱割れのリスク】
小
【施工可能フィルム】
・型板ガラス用フィルム(種類は少ない)
・外貼り用フィルム(平滑な面に施工)
*平滑面が内側の場合は通常(内貼り用)フィルムを採用
■すりガラス(曇りガラス)

フロートガラスの片面をてサンドブラスト加工した不透明のガラスです。この加工により、ガラスの表面に細かい凹凸がつき、型板ガラスよりも視線を遮る効果が高いです。しかし、ガラスに目を近づけると中がぼんやり見えてしまう点、水にぬれると透ける点がデメリットで、室内の結露でも透けてしまうため外部の窓にはあまり利用されません。汚れの問題と、水にぬれると透けるため、加工面を室内側に配置します。
ガラスの厚みは一般的に3mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、19mmです。
【熱割れのリスク】
小
【施工可能フィルム】
・型板/すりガラス用フィルム(種類少)
・外貼り用フィルム(平滑な面に施工)
■網入りガラス
(線入りガラス、ワイヤー入りガラス)

ガラス内にスチールワイヤーを挿入したガラス。火災のときに割れないわけでは無く、割れても弾け飛び防止や延焼を防ぐことができるガラスで、防火設備に利用されます。防犯効果はありません。フロートガラスに比べ強度が低く6割程度しかなく、熱割れを起こしやすいので注意が必要です。種類は網入り型ガラス、網入りすりガラス、網りフロストガラスがあります。網の模様は、「菱ワイヤー」「クロスワイヤー」「縦ワイヤー」などがありますが、メーカーで呼び方は異なります。
厚みは、6.8㎜と10㎜があり、一般住宅では6.8㎜のものが多く使用されています。
【熱割れのリスク】
大
【施工可能フィルム】
日射吸収率の高いフィルム(遮熱系)は注意が必要
外貼りで熱割れ低減が期待されるガラスも有
*対象の窓ガラスの設置状況により熱割れリスク判定が必要
■強化ガラス

フロートガラスや型板ガラスを軟化温度の約650〜700℃まで加熱し、均一に急冷し強度を高めたガラス。表面に圧縮力がかかった状態となりフロートガラスの3〜5倍の強度を持つ割れにくいガラスです。また割れた場合でもガラス全体が細かい粒状となり、けがを防ぐことができます。
学校やオフィス、商業施設のエントランなど、安全性が求められる多くの場所で採用されます。

厚みは一般的に4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、19mm。
強化ガラスは硬いと勘違いされますが、変形しやすさはフロートガラスと同じで す。あくまで、強化ガラスは変形しても割れないガラスです。但し、ハンマーなどで叩けば割れるので防犯性はありません。
【熱割れのリスク】
小
【施工可能フィルム】
殆どのフィルムが施工可能
*施工時のガラス面清掃に注意が必要
■合わせガラス(防犯ガラス)

2枚のガラスの間に中間膜と呼ばれる有機可塑性樹脂を挟み、接着して作られるガラスです。割れにくく、破片が飛び散らず安全性や衝突物が貫通しにくく防犯性が高まります。そのため、防犯ガラスとして広く利用されます。
また、中間膜の種類を変える事で機能を持たせることができ、中間膜の色を変えればガラスの意匠を変更できます。中間膜には紫外線カット効果もあります。
【熱割れのリスク】
中
【施工可能フィルム】
ガラス側の構成により施工可能
*対象の窓ガラスの構成・設置状況により熱割れリスク判定が必要
■熱線反射ガラス
(遮熱ガラス、ミラーガラス)

フロートガラスの外側にミラー効果のある金属酸化物膜をコーティングし、日射を30%程度反射し夏の省エネに貢献するガラスです。またミラー効果で外からの視線を遮るため、プライバシー保護のメリットもあります。鏡のように周囲の景色や空を写し建物に様々な表情を与えます。日中は外から室内が見えませんが、夜間は室内の方が明るいと見え方が逆転します。
ガラスの厚みは一般的に6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、19mmで、強化ガラスも対応可能です。主にオフィスビルなどで利用されます。
【熱割れのリスク】
大
【施工可能フィルム】
日射吸収率の高いフィルム(遮熱系)は注意が必要
*対象の窓ガラスの構成・設置状況により熱割れリスク判定が必要
■複層ガラス(ペアガラス)

スペーサーと呼ばれる金属部材で2枚のガラスの間に中空層を作り、断熱性を高めたガラスです。中空層は乾燥空気が封入されており、空気はガラスより熱伝導率が低いため断熱性が高くなります。現在、窓ガラスではフロートガラスよりも多く利用されています。例えば「網入りガラス」「型ガラス」「合わせガラス」など様々なガラスで製作できます。型ガラスや、すりガラスは凹凸面を空気層側に配置することで、汚れや濡れて透けるなどのデメリットを解消できます。また空気層は通常6mmもしくは12mmですが、それ以外の厚みも製作可能です。近年、断熱性能が求められうようになり16mmも見かけます。また空気よりも断熱性能が高いアルゴンやクリプトンなどのガスを充填するタイプもあります。
【熱割れのリスク】
中~大
【施工可能フィルム】
日射吸収率の高いフィルム(遮熱系)は注意が必要
*対象の窓ガラスの構成・設置状況により熱割れリスク判定が必要
■Low-E複層ガラス

フロートガラスとLow-Eガラスで構成された複層ガラスです。
Low-Eガラスとは、片面にLow-E膜という特殊な金属膜をコーティングでしたもので、Low-E膜には赤外線や紫外線をカットする特性があります。Low-E膜の種類によっては、冬の寒さだけでは無く、太陽の日差しを遮り夏にも有効です。
Low-Eガラスには「遮熱タイプ」と「断熱タイプ」があります。遮熱タイプは室外側のガラスに、断熱タイプは室内側のガラスにLow-E膜をコーティングします。基本的には、温暖地では夏の日差しを遮る遮熱タイプ、寒冷地では冬の日射熱を逃さない断熱タイプが使われます。
Low-E膜の色は、「ブロンズ」「ブルー」「グリーン」「グレー」「シルバー」「クリア」などメーカーでラインナップが様々です。

色で日射遮蔽率が異なるので性能値と、意匠性で選択をします。「クリア」はほぼ透明なので性能は低いです。
【熱割れのリスク】
大
【施工可能フィルム】
日射吸収率の高いフィルム(遮熱系)は注意が必要
ガラスの構成により、内貼り・外貼りの判定が必要
*対象の窓ガラスの構成・設置状況により熱割れリスク判定が必要
主要な窓ガラスの種類と施工できるフィルムを見てきました。
結果、殆どの窓ガラスには窓フィルムの施工が可能ですが、ガラスの種類や構成によって
フィルムのタイプが限定されてしまいます。
希望や目的に合ったフィルムが窓ガラスに貼れるタイプであるかどうかは、窓ガラスの熱割れに大きく関係しています。
窓フィルム施工をご検討の方は施工専門店での熱割れシュミレーションにて判定されることをお勧めいたします。
但し、熱割れシュミレーションは熱割れ発生の目安であり安全性を保障するものではありません。



